黒革の手帖

 『黒革の手帖』 松本清張 著  

  新潮文庫(写真左は2008年発刊の上巻,右は1983年発刊の下巻)

 

「わたくし,銀座の並木通り近辺で働いていたことがございます」…こう書くと,どんな職種を思い浮かべるでしょうか。私が社会人になりたての頃の勤務先は銀座八丁目にありましたが,水商売ではなく,何の変哲もない一般企業です。


銀座の7丁目辺りにあるという設定の「カルネ」は「手帖」という意味。「ルダン」「バーデン・バーデン」「べベイ」…。
お店の名前の由来を考えるのはとても面白いです。空間や提供サービスへのこだわり,または店主の生い立ちに関するキーワードなど,物語が展開するからです。

ホンノハシの活動の一つ,「ホンバタカイギ」をするようになって,なおさら飲食店の名前の由来に興味を持つようになりました。この名前のお店でホンバタカイギをするとしたら,どんな本が良いだろうか。この本を肴にホンバタカイギをするにはどんなコンセプトのレストランがあっているだろうか。空想が尽きません。

空想に銀座の羽を生やし,豪華絢爛「ホンバタカイギ」を思い描いてみました。場所はフランスの文豪の名前(このお店は残念ながら閉店してしまったようです。一番リーズナブルだったのですが),あるいは主人公,あるいは作品名がつけられた,とある高級レストラン。肴にする本はやはり店名となっている作品でしょうか。でも,実は読んだことがないのでまずは読まないと…。お店の下見はどうしましょう。そもそも,お品書きがHPに載ってはいるのですが,価格なんてものは明記してありません。ウェブ上の口コミによると,そのジャンルのレストランでは日本で一番高いとか…。そう考えると,まずはパトロンを探すために水商売デビューするか。いえいえ,下降気味の出版界を盛り上げるべくイベントに絡めるとか…。

壮大な空想はさておき,まずは『黒革の手帖』を肴にどこかでホンバタカイギを開くことを,地に足着けて考えようかなと思います。「文庫の表紙はどれが好みか」とか,「キーマンになりそうだった画家と燭台のママは何処に?」「東野圭吾の『白夜行』は平成版『黒革の手帖』かも」など,話が尽きないと思います。場所は,居心地の良いカフェを併設している文房具屋さんが良いのではと思います。