のっぽのサラ

 

 『のっぽのサラ』

    徳間書店

 

近所のアパートの土手で,がきんちょ時代にはずいぶん長いこと遊んだものです。
ヨモギ摘みやツクシとり,シロツメクサを編んで王冠を作ったりと,どちらかというとおしとやかな遊びから,うちから持ってきた段ボールをお尻に敷いて,そこを滑り降りるというスリルに満ちた遊びまで,その土手では楽しむことができました。
今その土手をみると,どう見てもそこを滑り降りるなんて危険としか思えず,当時とは多少土手の造りが変わったのかしら,それとも私が変わったのかしらと首をかしげています。
そういえば何年か前の横浜トリエンナーレでは,布団の山が展示されていて,子どもも大人もそこを滑り降りるというアート作品が展示されていました。
そんな昔のことを思い出したのは,干し草の山を滑り降りる場面を読んだからです。
これと言って大きな事件が起こるでもなく,激しい感情の変化が描かれているわけでもなく,淡々とした文章で描かれているのですが,読み終わった後は心の深~いところにずんと響く一冊です。
ドラマ化もされているようなのですが,こういった物語を自分のペースで味わえることこそが,読書の醍醐味だと思います。