福島原発の闇 原発下請け労働者の現実

 

『福島原発の闇 原発下請け労働者の現実』

 

 朝日新聞出版

 

「東日本大震災発生から5年」というコーナーに展示するために借りた本です。題名からして原発反対派の意見の本だろうなあということは推測できましたので、「ライブラリアンとしては原発賛成派の意見の本も展示しなくてはいけないなあと思いながら読み進めました。
最先端の技術を駆使した「原発」内で行われる不健康で過酷な労働を、誰が想像できたでありましょうか。そしてそれが外には出ないという事実の恐ろしさ、、、。
 ですが、これは「原発」だけの問題と言えないのではないのかなと思うのです。日本人の気質や文化・歴史的背景が生んだ社会全体の問題なのではと。
 ある人が「誰かが死ななきゃ変わらないのだよ」とおっしゃったのは、原発についてではありません。その方の職場についてです。そしてその職場は原発とは直接関係のない、未来ある子どもたちの育ちの現場です。
 その言葉を聞いたときは「何を大げさな」と笑ったのですが、『福島原発の闇』を読みながら、その言葉が思い出され、背筋がぞっとしました。
 著者が身を犠牲にしてまで書き上げた事実の記録と、その話を聞いて「まるで戦場のようだ」とつぶやき一気に書き上げたという水木しげるの絵で構成されたこの本、30年以上も前に書かれたものだと知って、またもや背筋がぞっとしました。