『秘密。―私と私のあいだの十二話』
メディアファクトリー
2005年
♫え~めんで こ~いをし~て~♫
という歌、ご存知の方が多いかと思います。
シンガーソングライターの大瀧詠一が1980年代に歌った曲で、カネボウのCM
にも使われ、大ヒットしました。もちろんA面に収められたのですが、そのB面はというと♪さらばシベリア鉄道♪という渋めの曲となっていたそうです。
さて、物事いろいろな角度から見たり、表裏をひっくり返してみたり、光の当て方を変えたりすると、今まで気づかなかった思いがけないことに気付いたりするものです。
お話の世界にもそれは当然あって、この秋の「大人のおはなし会」では「ふたつ」と題して、そんな裏表のある話を取り混ぜながら、物語の世界へ大人を引き込もうとたくらみました。
そこで紹介する本を選定中に出会ったのがこの「秘密。」です。
「大人のおはなし会」のプログラムでは残念ながら紹介できないのでここで。
12人の有名どころの作家が、一つの舞台で繰り広げられる物語を、二つの角度から描いた短編集です。
私が中でも一番好きだなあと思ったのは、小川洋子の「電話アーティストの甥」と「電話アーティストの恋人」です。懐かしの黒電話が味のある小道具として登場します。
偶然でしょうが、堀江敏幸も黒電話を扱った物語を書いています。
皆さん、廊下に黒電話を引っ張っていって、家族に秘密の相手に電話を掛けた世代でしょうか。
…と、ここまで書いてはたと思ったのですが…今や「A面」「B面」は死語?