カラフル


「カラフル」

 森絵都 作

 文藝春秋


小学校の図工でのこと。白い花瓶の下書きを終えて、水彩絵の具で色を付けようとしていると、先生が「白いものに影を付けるときは青でつけるのよ。」と教えてくれました。ちょいちょいちょいと白い画面に薄い青を筆で載せていくと、あら不思議、白い花瓶の表面の凸凹が、本物そっくりに浮き上がってきました。「へえ~すごいなあ。白のときは青か」と感心した思い出があります。けれど、今思い返してみると、あの時私は確か大好きなアジサイが描きたかったんだよなあ、、、花瓶はどうでもよかったんだよ、と。花瓶の絵は思い出せますが、肝心のアジサイは、どう描いたのか全く思い出せません。そして、なんだか「白のときは青」という方程式みたいなものを教えられてしまったときから、絵をかくのが嫌いになってしまったように思えるのです。決めつけてしまうと、そこで止まってしまうんですよね。