「希望」という名の船にのって

 

「『希望』という名の船にのって」

 

 森下一仁

 

なつこん(SF大会)へ行くつくばエキスプレスの中で読了です。海外旅行の行きの機内で地球の歩き方を読むような,テスト当日の電車内で教科書を一通り読んでおくような,そんな気軽さで読み始めたのですが,いつの間にか引き込まれました。

読み終わった後は,爽やかなすっきり感…あれれ?でもなんだかおかしい。

SF小説は落ちるところに落ちないのがいいところだということに最近になって気付いたのですが,これはスキっと落ちて,しかもわかりやすいハッピーエンドではありませんか。

それもそのはず。大人向けのSFを子供向けにリライトされたものだったからです。

どうやらラストがちょっと違うらしいのですが,それっていいの~?

その後,なつこんで急きょ参加したビブリオバトルでも、SFのリライト版を紹介した人が,「元のとてもいいシーンが,子供向けに書かれたために,かえって脈略のない不可解なシーンになってしまっているのが残念」と嘆いていらっしゃいました。

私はなつこんで「子供達にSF本を」というイベントに参加したのですが,無理やり文字面を読ませようとすると,本当のSFの良さは伝わらなくなるという矛盾に,今さらながらはっきりと認識したのです。

初SFは「隠れてこそこそ読んだ,親や年の離れた兄弟の本棚で出会った本」なんていう人たちが,真のSFファンに成長するのかもしれないなあと思いました。